「ねえ、まだメールこない?」
紗枝がいつになくそわそわしながら、私の肩を叩いた。
「…てか、携帯もってないし。」
「…マジか…。そんなのこっそりポケットに入れとけよ。」
「走った時に落ちたらマズイでしょ。」
「…だけど……。」
「紗枝ちんが気にしてどうすんのよ。」
「…だって、自分の彼氏がだよ?!一年でピッチャーに抜擢されて、一回戦ノーヒットノーラン。期待しない方がおかしいでしょうよ?」
「…う~ん、そりゃそうだけど…。」
「冷静だね。」
「そうでもしなきゃ部活に集中できないしね。」
「………。あ~……、マジ気になるわあ……。」
夏の甲子園。
県予選2回戦……。
現在我が校は、戦いのさなか……
…だと思われる。
ピッチャーは里中佳明。
地区大会では一度も投げなかった彼が……
その大舞台で、快進撃を繰り広げていた。
「柚~ッ!!」
遠くから……
律の声。
声のする方に振り返る。
彼女は、昇降口からこちらに向かって一生懸命手を振っていた。
「……勝ったよ!野球部!!」
息を切らし……
肩を上下させながら、律はニヤリと笑った。
あとは言うまでもない。
…やった!!
心の中でガッツポーズをする私の横で…
「ぃよぉっしゃあぁ~!!」
全身全霊で喜びをあらわにする紗枝がいた。
「3ー0!完封・完投だったらしいよ!」
律はそこまで言って……
「…んじゃ!部活に戻るから!」
嵐のように去っていった。
紗枝といい、律といい……
まるで他人事じゃないみたい。


