「………。」
「…冗談だよ、冗談!悪いねえ、困らせて。」
「いえ、そんなこと…。でも、今日は用事があるので……。すみません。」
「良かったらまたおいで。ロドリゲスも喜ぶよ。」
「…ハイ、ありがとうございます。」
私はおばあちゃんにアタマを下げると……
ロドリゲスに一瞥し、『栗原家』の門を出た。
彼がまるで『サヨナラ』するかのように…
一吠えするのを背中で聞きながら……。
素敵なおばあちゃんだった。
それに……、中道を大切にしていることが、よくわかる。
「それにしても……。」
『ロドリゲス』って…。
なんてわかりやすい名前。
アレックス ロドリゲス…。
大リーグで年間MVPプレーヤーに輝いたことのある選手。
私はメジャーには疎いけど…、確か1回ではなかった。2回くらいはMVPにならなかった…?
「中道らしー……。」
ホントに野球が好きなんだね。
でも……
勢いで来てしまったものの、本人に会わなくて良かったかも……。
「どうしてあんなことをしたの?」
責めるつもりはない。
それでも…
答えを求めてしまっていただろう。
傷つく勇気もないのに、
理由を問いただろう。
なんて馬鹿なマネを……。
自分自身に呆れ返る。
なのに……
結があの栗原家を訪れたことはない。
その事実が……
なんとなく、私を安心させていた。
複雑な想いを抱えたまま、私はまた帰路についた。
もちろん、その後栗原家で繰り広げられる会話なんて知る訳もなく……。


