As Time Goes By ~僕等のかえりみち~

「…返してよ。」



私はヤツを睨む。



「ちゃんと答えたらな。」



「…何を?」



「…だから…、お前が座ってたその席っ。俺の席だろ。何してんのって聞いてんだよ。」



「…し、…視力検査?だってホラ、今回はあんたが代わってくれたから良かったけどさあ…、今度はそうもいかないじゃん?だからさ、どんなもんかなぁ…って。」



「…………。」




無反応…?


これでは…通用する訳ないか。




「…なんだ。そーゆーこと。」



「……は?」



「紛らわしいんだよ、あほう。てっきりキーホルダー握って俺との思い出に浸ってんじゃねえかって期待したじゃん。」



…期待?


「…んなこと、ある訳ないもんなあ?」



「…………。」




その通りだよ、中道。



あんたは鈍感じゃないから気づいているんでしょう?


だからそんな…
困ったかのような笑顔を作っているんでしょう?




「ハイ。」



奴はあっさりと……



キーホルダーを手渡した。



「じゃあ、そういうことで……。」




これ以上の長居は危険だ。


今の私に……



自分がどんな行動をとるのか、予測がつかない。



背を向ける私の肩に……、



「待て。」



中道の手が置かれた。



「…何?」



恐る恐る、振り返る。



駄目だとわかっているのに……




逃げられない。




「…髪…、切ったんだな。」



「…うん。」



「似合うじゃん。」



「…ありがと。」



「…でも…、前のもよかった。」



「………。」



「上原と結、全く同じ髪型でさ…。それこそ双子って感じじゃん?」



「…うん、まあ。そうだね。」



「…みんなどっちがどっちだかわかんねーだろ。それが面白かったのに。つまんねーな。」



「…あのねえ、ウチらはあんたのおもちゃじゃあるまいし……」



「…けど、俺には判る。」



「…………。」



「俺だけが、柚と結を見分けられたのに。」




柚……。




中道が……



私を名前で呼んだ。
さりげなかったけれど……、
初めて呼んだ。




「…つまんねー。」



何よ……。



結はあんたの恋人だからいいけどさ、私はホント何?!



アンタのアタマの中、一度覗かせて。


何がそんなに不満…?