As Time Goes By ~僕等のかえりみち~

なかなか出てこないなんて、勉強してない証拠でもある。



「あったあった!」



教科書の束の一番下からそれを取り出して、再びロッカーを閉める。




しん……



と……、


教室が静まり返った。



普段の賑やかさからは想像できないくらいの静けさ。




「…………。」



私は……



一番近くに置かれた席を…



じっと見つめた。




今あいつは……



ここから、どんな景色を見ているんだろう。



ちょっとした興味本位が湧いてきて…



椅子をひいて、座ってみる。




「…なるほど。」



確かに…
ここからは、私の席がよく見える。




「……【特権】…か。」



中道はここから…



私の後ろ姿を見ることなんてあるのだろうか。



いや、勝手に視界に入っちゃう?



「気ぃ抜けないな。」



ポツリとぼやいたその瞬間……、




ガラッ!!






…ドアが…

開いた。



驚いて椅子から立ち上がる私をじっと見ているのは……



よりによって、中道張本人!




チャリン…。



掌から……



キーホルダーがこぼれ落ちた。





「お前、何してんの?」



「…中道……。」



この状況を…


どう説明しろと?



「…えっと……」



あわてふためくわたしを余所に、中道はスタスタと教室に入りこんだ。




「……ん。」




落としたキーホルダーを拾いあげ、私の目の前に翳す。



「…ありがと。」



受け取ろうと手を伸ばすけれど……


その手は、宙を切った。




「…何?」



取ろうとすると、ひょいっと避けられ…


それを何度か繰り返す。