「柚~、呼んでるよ、里中っ。」



「はいは~い。」



律に呼ばれて、私は廊下へと向かう。





「…おっと……、ごめん!」



教室に入ってきた人とぶつかりそうになり…、


私は思わず謝った。



「…いってぇ~!」



「……。なら保健室に行ってこれば?」



どっと笑いが起きるお馴染みの光景。



「…その姿、あいつにも見せてやれ。」



ぶつかりそうになった相手…、


中道侑は皮肉を込めていい放った。




「……残念。佳明とは争うことは一切ないから。」



【佳明】とは……



そう、晴れてホンモノの恋人となった里中くんのことである。




ヒュ~


と、歓声が上がる。


…しまった!
事実とはいえエライのろけととられてしまうようなことを……!




「柚ー?」



ひょっこりと…


佳明が顔を覗かせた。



「ホレ、はよ行ってやれや。」



中道にポンッと押され……



運悪く(?)佳明の腕の中へとよろめく。




「わわ……、ご、ごめんっ!」



思わず、その距離をはかる。




そんな様子をじーっと見つめる沢山の視線がイタイ。




「…あっちで話そうっ。」



私は佳明の腕をしっかと掴み……



ずんずんと廊下を歩いていった。






「相変わらず中道とはあんな感じ?」




突然出た、中道の名前に……



「たまたまだよ、たまたま!」



つい、語気を荒げた。





こんな風に……



佳明は、毎日一度は必ず私の教室に来ていた。



廊下でたわいない話をする……。



それが私達のデート。


野球部は県大会を控えていて……



部活の後なんて会う暇がない。



だからこの時間が……



私達には貴重な時間であった。




「そういやあいつらって…、学校で一緒にいる所みたことないよな。」



佳明がふと漏らした言葉に…、


私は、考え込む。




そう言われてみると、結がうちのクラスに来ることもなけりゃ…


中道が行ってる気配もない。


中道は、休み時間には大抵男子生徒と談笑しているし……。



「…そうだよね、そうかも…。」



…それでも、二人は必ず一緒に下校してる。


きっと放課後にデートをしているのだろう。



うらやましいと言ったら…



そうなる。