「なんだ?」


 不思議に思ってロイドが問いかけると、ユイはポツリとつぶやいた。


「初めて名前を呼ばれたような気がする」


 それが今、この状況を忘れて、呆然とするほど重要な事とは思えない。
 ロイドは少し笑みを浮かべて、意地悪く言う。


「余裕じゃないか。もうしばらく、そうしているか?」


 途端にユイは、泣きそうな顔で訴えた。


「足場が崩れそうなの。お願い、すぐに助けて」


 あまり意地悪をしている余裕はなさそうだ。
 それに惚れた弱みか、下手に出られると邪気も一気に消し飛んだ。