「結婚生活は楽しい事ばかりじゃないぞ。互いを尊重し、苦楽を共にするという事だ。恋愛感情だけでしても長続きはしないし、打算でしても楽しい生活が送れる可能性は低い。どっちにしろ覚悟が必要だな。オレは女房をあまり尊重していなかったし、苦ばかり与えて楽は与えてやれなかった。恋愛感情だけで結婚したからだろうな。若気の至りだ」


 そう言ってブラーヌは少し笑った。

 ブラーヌは一度結婚に失敗している。
 ロイドを拾う前の事はあまり語らないが、妻と息子を彼なりに愛していたのだろう。
 その言葉には実感がこもっていた。

 苦楽ならこの一ヶ月足らずで充分共にした。
 そう考える事自体甘いのかも知れないが、ユイと一緒なら、この先どんな困難も共に乗り越えられる気がする。
 そして一生、共にいたい。


 富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、死が二人を分かつまで——。