ロイドは一呼吸置いて口を開く。


「私はユイを手放す気はありません。今日ニッポンに帰しても、近いうちに迎えに行きます」

「そうか」


 陛下はより一層目を細めて、大きく息を吐き出した。


「やれやれ。これで私も肩の荷がひとつ下ろせた」


 心底ホッとした様子の陛下に、ロイドは以前から気になっていた事を問いかけた。


「前々からお伺いしたかったのですが、陛下はどうして私に結婚を勧めるのですか?」

「私もおまえがいつまでも独り身なのは気になっていたが、私以上に気にかけている方がいるんだ」

「どなたですか?」

「ラヴィル伯爵夫人だよ」

「へ?」


 ロイドは思わず間抜けな声を漏らす。