今夜は煽られてもかまわない。
 元々最初からそのつもりだ。ユイも覚悟は出来ているだろう。
 なにしろ、一緒にいられる最後の夜なのだから。


「欲情したのか?」


 からかうように再び問うと、ユイは平然と返した。


「そうかもね」
「……切り返しが、うまくなったな。なんか調子が狂う」


 ロイドが不満げにつぶやくと、ユイはクスリと笑った。


 本当に眠くなってはいないようだ。
 体勢は変わらないものの、話しかければユイはちゃんと受け答えをする。
 ユイも時々酒を舐めながら、しばらく会話を続けた。

 五杯目を飲み干した辺りから、ロイドは次第に焦り始めた。
 いつもなら、これだけ飲めば、すでにいくらか酔いが回っているはずだった。

 ゆうべはほとんど眠っていない。
 体調も万全とはいえないのに、どういうわけか目も頭も益々冴えてくる。