だが一番大きな目標を失い、それも思いも寄らない顛末で、頭はまだ混乱している。

 正直、そんな気分にはなれなかった。

 自室の扉を開けようとして、ふと見ると、ユイが全く動いていない事に気付いた。


(今日のところは、おあずけだな)


 ユイが意識して緊張しているのを悟り、ロイドは少し笑って静かに言う。


「身構えるな。オレが見つけたわけじゃないんだ。何もしない」
「……うん」


 ユイは答えて歩き始めた。

 そうは言ったものの”絶対”という自信はない。
 なにしろユイは、無自覚で煽る卑怯な奴だ。

 なので、一言付け加えた。


「多分……」
「多分?」


 ユイはピタリと歩を止め、探るようにロイドを見つめる。

 そういえば騒動に紛れて、今日のノルマを果たしていなかった。
 そのくらいは許してもらいたい。


「キスはノルマだからな。この限りではない」


 ユイはクスリと笑い、ロイドに駆け寄ってきた。
 そして、二人一緒にロイドの部屋に入った。