「触ったの?」


 柔らかいところは頬と首筋しか触っていない。
 他はまるで骨格標本のように、骨の形がわかった。

 触ったと言えるような色気のあるものではないが、状況からしてロイドが不利だ。

 ベストのボタンを、元通りにしておかなかった事を少し後悔しながら正直に白状した。

 肋の数を数えているような気がしたと冗談めかして言うと、ユイは叫ぶように非難する。


「断りもなく触ったのね?!」


 普通あの状況で「触ります」と断りはしないだろう。
 それよりも案外早い段階から、眠っていた事に驚いて、ロイドは反論する。


「って、気付いてなかったのか? その方が問題だろう。ったく、緊張感のない奴だな」