ユイをニッポンに帰すと決めたはずなのに、反する二つの願いの間で、今も心は揺れている。


『連れて逃げて』
『……好き……』


 耳に残る甘い言葉が、嬉しさと共に、心に重くのしかかる。

 ユイを守りたい。
 ユイを手放したくない。
 けれどそれ以上に、ユイを不幸にしたくはない。

 たとえ陛下を裏切る事になっても、ユイは必ずニッポンに帰す。

 そして、陛下を裏切る事のないように、やる事はひとつだ。

 残り百四十秒。
 最後まで諦めない。
 必ず成し遂げ、笑ってユイを送り出してやる。

 決意を胸に、ロイドは立ち上がり、自室を素通りして、研究室に向かった。



(第2話 完)