「でもそれじゃ、それまでに王子様が見つからなかったら?」

「誰に向かって言っている。オレは諦めない。必ず殿下を見つけ出して、おまえをニッポンに帰す」


 ユイを連れて逃げるつもりなど、元々ない。
 クランベールに逃げる場所などない。

 ロイドが逃げ出せば、残されたローザンは、何も知らなくても追及されるだろう。
 無理矢理引きずり込んだ挙げ句、そんな迷惑はかけられない。

 ローザンだけでなく、ユイも不幸にしかできない。
 何もかも失ったロイドは、あまりにも無力だ。

 ユイを守るには、ニッポンに帰すのが一番だ。
 たとえ二度と会えなくなったとしても。

 黙ってロイドを見つめるユイの頬を涙が伝った。
 ロイドは少し驚いて尋ねる。


「どうした?」
「なんでもない」


 ユイは小さな声でつぶやいた。