「で、話を元に戻すけど、王子様が好きなわけじゃないなら、どうして私にキスするの?」


 呆れてものも言えない。
 いちいち聞かなきゃ分からない事じゃないだろう。
 普通に考えてピンと来そうなものだ。

 ロイドは折りたたんだマシンをポケットにしまうと、クルリと背を向けて吐き捨てるように言う。


「おまえの唇がそうさせるんだ」
「はぁ?」


 背後でユイの呆れたような声が聞こえた。
 呆れているのはこっちの方だ。

 からかわれたと思ったのか、すぐにユイは怒鳴った。


「どういう意味よ!」


 ロイドは背を向けたまま、入口横の工具置き場に向かって歩き始めた。


「そのままの意味だ。おまえの唇はそういう魔性を秘めている」
「……え……」


 ユイはそのまま絶句した。

 さすがにばれたかと思うと、なんだか急に照れくさくなり、顔が熱くなってきた。