ユイは額を押さえて顔を歪める。


「気がついてたの?」


 ロイドはメガネをかけ直し、冷ややかにユイを見下ろした。


「気がつかないわけがないだろう。オレとキスしたいなら素直にそう言え。
ったく、回りくどい」


 ユイは頬を赤らめて否定する。


「違うわよ」
「じゃあ、何だ」


 ロイドが問いかけると、ユイは常々思っていたという疑問をロイドに打ち明けた。

 ユイがクランベールにやって来て、すでに十日が経っていた。
 ユイはその間、殿下を演じ続けてきたが、ジレット嬢以外には誰にも正体を見破られていない。