お母さんはどんな顔をしてる?


ちゃんとお母さんを見て言えなかった。

でも、伝わった?
私の思い。


勇気を出してお母さんの方を見てみた。

そこには、一粒の涙を流すお母さんがいた。


「お母さん?」

「え、あらっ、どうしちゃったのかしら。」


パパと真咲が笑ってる。


そこには、家族全員がそろっていた。


そう、家族全員が。



「真里亜も早く着替えてきなさい。食べるわよ。」

「うん。」


リビングから出る。


部屋へ向かう途中、ふと足元に冷たい感覚があった。

それは、たった今私の目から零れ落ちた小さな滴。


なんで、涙は流れるの。

だって、こんなこと普通のことなのに。


学校へ行くときは「いってきます」「いってらっしゃい」って言うでしょ。

帰ってきたら「ただいま」「おかえり」って言うでしょ。


これが普通なんだ。


こんなにも普通のことなのに、今は、こんな普通のことがとても幸せに感じる。

もしも、今、「幸せって何?」って聞かれたら私は迷わず答えられるよ。



「普通であることです」って―――



涙を拭いて、リビングへ向かう。

そこには、さっきと変わらない私の家族がいた。



「来た来た。じゃぁ食べようか。」


「うん。」

「いただきまぁす!」

「「「いただきます」」」


真咲が一番を切って食べ始める。