すでに男との手はルイの足首から離れた。 そして、ずるりと地を滑る音とともに、男は斜面を転がり落ちていった。 途中の木々やむき出しの岩に身体をぶつけ、男は全身に打撲切り傷を負った。 さらには勢いを増しながら転がり続け、背中から大岩に衝突する。 折れたとまではいかないが、骨にヒビは入ったはず。 斜面は急で長い。 一度落ちてしまえば、もう戻れない。 腕が千切れるくらいに伸ばしたアデルの手は、ルイの指先を掠めることすら叶わなかった。 そしてルイの身体は、男と同じ道へと落ちる。