たまにあるそんな上司と部下の衝突も気にならないくらいには、あたしの毎日は楽しかった。
季節は春だった。
卒業と入学の慌しい時期は過ぎ、桜も完全に散ってしまった頃。
あたしは梅沢さんと待ち合わせをしていた。いつかの、あのバーだった。
「お待たせ~!」
今日も華やかかつスタイリッシュに梅沢さんはドアを開けて登場した。
一度オススメ設計を提案してから2ヶ月が経っていた。彼女が多忙期に入り、その後のアポが取れなかったせいだ。
「お久しぶりです。長い出張お疲れ様でした」
あんまりに梅沢さんに会えないので、あの眼鏡の男性の亀山さんに尋ねたのだ。梅沢さんはお元気ですか、と。
そしたら亀山さんは、ああ2週間ほど東北の出張で、俺も会ってないから判らない、と答えたのだ。
「でも多分元気だろ。あっちの支社から報告が入るのを見てる限りじゃ、相変わらず暴れてるみたいだし」
・・・暴れている。うーん。想像できる。何しか元気な人だからなあ、梅沢さんて。
そしてこの前の職域訪問で、やっとランチ帰りの彼女を捕まえることが出来たのだった。