「菜子ちゃん?」

「あっ……あのっ、さっきの……聞きました?」

「うん?」


そうやって、とぼけるの反則。

絶対聞こえてたよね?

かと言って、確認する勇気ないし。

話題、変える?



「あっ、もう大丈夫ですから。愁先輩、部活行ってください」

ここは、逃げの作戦で。



「菜子ちゃん」

「はっ、はいっ!」

「ちゃんと、理由聞かせて」


そうやって、真っ直ぐ見つめるの反則だよ。

吸い込まれそうなその瞳に、胸苦しくなってるって、分かってる?


「菜子ちゃん?」

笑顔で名前呼ぶの、本当、反則だし。

何もかも受けとめるよっていうような態度でいる先輩に素直になってしまうし。