「…ごめん、
とりあえず上がりな?
よしよし。」
希鷹が私を支えてくれ、
リビングのソファに移動する。
殺風景なリビング。
ソファに座るあたしの横に腰掛ける希鷹。
コンビニの袋をガサゴソと開け、あたしの好きなお菓子を取り出す。
「あーんして、」
そんな、甘い文句にまた胸が痛む。
「…いやじゃ」
「じゃ、無理矢理。」
希鷹の指先が唇に当たり、チョコレートがあたしの口の中に入る。
舌の上でとろけるチョコレートは、いつもの何倍も甘く感じた。
「…うまいっ」
あたしが発した言葉にやっと少し、表情が和らぐ希鷹。
心配かけさせて、ごめん。
言いたいのに、言えない。
ソファーで隣り合うことが恥ずかしくて、
チョコレートがついた手を、さりげなく自分で舐めている希鷹を見て、
ってゆーか、二人っきりが久しぶりなのに、なんだこりゃっ!
て感じで。
間違いなく、脳内混乱状態。
「ほんと、ごめん。
大地、兄貴さ、
あぁ見えて悪いやつじゃないんだけど、女関係に関してはほんっとにたちが悪くて。
巻き込んで、ほんとごめん」
俯きながら、謝る希鷹は、
とても悲しそうだった。
希鷹を支えたい…そう、強く強く思ったけど、それは思うだけの感情。
なにも、行動には示せない。
あたしは希鷹の
彼女でなく、
親友、だから。
そして、今日が終わってしまえば、夏休みが再び始まれば、
蒲田さんと付き合っている限り、あたしとは、こんな風に会えないのだから。
第三章 完結。

