俺らは黙って蝶と沙織のやりとりを見つめる。

「ねえ蝶?」

「なに?」

「死んだ人のことは生きている人が覚えててくれるけど、死んだ人間に忘れられた生きた人間はどうすればいいのかしらね?」

この言葉をつぶやいた瞬間ふわっとあたりに風が吹いた。

蝶はなに言ったらいいのかわからずに立ち尽くしていた。

沙「ごめんなさい。困らせるつもりはなかったの。今夜はもう遅いわ。さあ、へやに戻りなさい。」

蝶「え、あ、うん・・・・」

そのまま二人はいなくなる。

沖「死んだ人間に忘れられた生きた人間はどうすればいい、か・・・・」

総司が沙織の言葉をつぶやく。

原「確かに、戦とかで残されるのは女だからな。」

一「刻まれる時間は残酷に人を縛りつける。だからこそ沙織は我らに命の意味を伝えようとしたのか?」

沖「沙織は、そんな風に誰かに残されたことがあるからそういうんじゃない?」

一「ああ。そうかもしれぬな。」

俺らはしばらくの間その場に立ち尽くしていた。