「それをすぐにできるか?」

「ええ。今夜ならできるわ。幸い今夜は満月ですもの。」

「そうか、すまねえが頼む。」

そう言って俺は頭を下げる。

するとそっと沙織が手を添えて頭を上げさせる。

「副長が簡単に頭を下げちゃだめよ。それほど、大切なのね。」

「あたりめえだ。」

あいつの笑顔のためならば

たとえどんなことでも俺は迷わず行うだろう。

「いい?今夜はあなたたち一つの布団で眠りなさい」

「どうしてだ?」

「あなたも、あいさつくらいはしておきなさい。」

沙織が苦笑いをこぼす。

「ああ。そういうことか。」

「ええ。本当にあなた仕事以外はからきしだめねえ。」

「うるせえ。」

図星をつかれて俺はそっぽを向く。

「じゃあ私は今夜まで用意しておくから。」

「ああ。頼んだ。」

そう言って俺は沙織の部屋から出る。