「姫……!」


儚い人がこのままいなくなってしまうのではないかと、クロスは出し惜しんだ声をあげた。


墓場が似合う人は死者でしかない。女神とて生きた人ではない。だから、つい、“もといた居場所に戻ってしまうんじゃないかと思えて”――


「クロス……」


風でなびく髪を指で押さえてこちらを見た姫。


「珍しいですね、あなたがここに来るとは」


そんな何気なしの会話を、彼女は“微笑みながら言ってみせた”。



「ひ、め……」


いつもの笑顔。
安心さえ覚え、安堵もできる微笑なのに――どうしてこんな気持ちになるのだろうか?


胸が痛い。喉が捲れあがるような錯覚に、何かを言いたいのに腹にたまっていく言葉。