「あ……、あぁぁ。ハァ」

「リンコ、本当に大丈夫なのか?」

「大丈夫です。しっかりとカーテンを持っていて下さいますか。今、上がりますから」

「えっ?」
 聞こえてきた声は、倫子の声とは言い難かった。

 ジェームスはカーテンを体で固定して、ともかく踏ん張った。

 ぶら下がっているだろうという体重を感じる。

 上ってきたのは、間違いなく倫子であった。
 しかし、顔は蒼白で表情がなく、明らかに様子が変だ。

「どうしたんだ、リンコ」

 暫く倫子は無言で突っ立っていたが、辺りを見回し、ジェームスを見据えると、ようやく口を開いた。

「ボクは、倫子ではありません。賢司です」

「ケンジ?」

「そうです。初めまして、ジェームスさん。僕の名は、佐々木賢司といいます」