「寂しいねぇ」
 祖母はしみじみと言った。

「最後の卒業生なんだね。学校がなくなるっていうことは、村の終りを感じるよ」

 祖母は庭の軒先で、賢司を捕まえて、話をしている。

「子供たちの声で目覚めた朝も、これからは聞こえなくなる」

 桜の花びらが、綿のように膨らんで、重そうに枝にぶら下がっている。

 再び祖母は、淋しいねぇ、と付け加えた。

 それでもなお、いつまでも、心の中に残しておきたいと、祖母は静かに言った。