「人は何処まで愚かな生き物なんだ」
 アンジェエフスキは、星空に嘆いた。

「星空が、こんなに美しいのに・・・」


 今夜のうちに、アンジェエフスキのいるロシア軍は、陣を引き払って撤退することになっている。

 しかし、敗北でないことを証明するため、作戦指令部は、日本軍を急襲し、打撃を与えてから凱旋するというシナリオを立てた。

 結局、アンジェエフスキはその作戦によって、日本軍の銃弾を全身に浴び、氷の上で命を落とした。

 春になると、彼を含む兵士たちの亡骸が、湖の上にプカプカと浮かんだ。