「……ごめん」


教室に入って、座ったところで、一番に声を出したのは櫂だった。


さっきのような低い声ではなく、いつもの櫂の声。


「俺、油断してた」


うつむく櫂。


私は、座ったまま櫂のところへ行く。


「一番傷ついたのは、櫂でしょ?」


櫂の頭をポンポンとなでた。


すると、鈴も近くに寄ってきて櫂の頭に手を置いた。


それに続いて圭一も櫂の頭に手を置く。


「だれも、責めたりとかはしないから」


なるべく優しく言った。


「……っ」


櫂は、何も言わないで静かに泣き始める。


……男が泣いちゃいけないとか、だれが言ったんだろうか。


別にいいと思う。


だって、涙って、こんなに綺麗だし。