「やめろっ!」


兄ちゃんの声が倉庫に響き渡る。


兄ちゃんは残っている敵には目もくれず、麻白と私のほうへ走ってきた。


「ずいぶんと滑稽な光景だよな? 青」


麻白が私の耳元でつぶやく。


「あの流維がお前みたいな奴のために必死になってんだぜ?」


答える余裕すらない。


流れる涙の理由は痛みだけではない。


背中の痛みと、また切られるのではないかという恐怖。


怖いと思うのは、あのタンスの隙間から殺されるお父さんを見ていた時以来だ。


「……青っ!」


兄ちゃんが叫んだときに目の端に見えたもの。


それは、再び向かってくる麻白のナイフだった。