あれは、確か台風が近づいてきていて雨の日だったなぁ……。
俺は、そのころまだ中学生で、夜桜の副総長をやっていたんだ。
そして、いつもの様に族同士の潰し合いをしていた。
相手はどんどん倒れていって、半分まで減ったところで危機感を感じたのかなぁ……。
近くにいた男を人質に取ったんだ。
それが櫂。
けど、思ったより櫂が強くてなぁ。
敵はあっという間に倒された。
「そのときの表情は忘れられねぇよ」
「どんな表情だったの?」
青が聞いてきた。
「どんな……っていわれてもなぁ。
とにかく、とても冷たくて全てを否定するような。
そんな表情だった。
とにかく、その表情には感情がはいってなかったんだ」
そして、俺はまた話を続けた。
櫂はそのまま雨の中傘もささずに何処かへ消えて行った。

