call my name




「あぁ、今日私の地元花火大会だった。それ行ってるんじゃないかな?」


奈々美が思い出したように言った。


「紗雪誘えばよかったのにね」


景子が笑いながら新しいお酒の缶を開けた。

「そやな」と美咲も笑った。


「てか、誰と行ってるんだろうね」

「うーん、女の子?」


笑いながら美咲が言う。


「まぁ、でもそれだったら紗雪誘うか」

「だから……何でそうなるのよ」


空いた缶をテーブルに置いてあたしは苦笑した。

地元の花火大会は異常に人が集まるため、行ったことがなかった。

そういう話は昔からよく聞いていたが、それほど魅力は感じなかったのも事実だ。

人混みは、少し苦手。

「で、どうなの」と奈々美が突っ込んできた。


「どうって……。嫌いではないよ」


あたしがそう言うと、「紗雪に彼氏かー。先越されたね」と景子がうなだれた。


「いや、そんなんじゃないって」


本当にそんなつもりで言ったのではない。

確かに、上手くは言えないけれど、司と話をしたり、メールをするのは楽しかったりする。

内容は全くないメールだったり、話だけれど、気兼ねもなく笑えたりもしている。


そう考えると好き……なのかもしれない。


「まず、司があたしに気があるかどうか分からないじゃん」

「いや、あるに決まってるでしょ」


きっぱりと奈々美が言い放つ。

それに言葉を詰まらせ、「……そうなのかなぁ」と小さく呟いた。


そうだとしても、今でもほんの少しは智也のことを考えたりもする。

時間の重さにはやはり勝てないことだってある。

でも、前よりは頻度は減った。激しい想いに駆られることもなくなった。

それも確かなことだ。


そういうことを中心に話が弾んだ飲み会だった。

弾んだというより、あたしが弄られるだけ弄られただけだけども。