催涙雨





「でも…」



葵があたしの瞳を捕らえる。




「これ────‥
婚約指輪になっちゃった。」



『ぁぉぃ───‥』



葵はふふっと優しく笑った。



「海にプロポーズする前に
海のご両親から
結婚の承諾、
いただいちゃいました。」



あたしの顔を見て
葵は笑いを噴き出した。


自分でも自覚してる。


いまの自分が、
なんともマヌケな顔を
していること。



「海、変な顔。」



そう言って涼しげな顔で
あたしに微笑む。


ああ、葵だ。


あたしの好きな、
葵の笑顔だ。



「あーあ、これが婚約指輪になるなら、もっといい指輪にしたのになあ。」



こんな安物っ…!って
葵は何か悔いているけれど

あたしは、十分すぎるよ。