催涙雨





よかったと安堵のため息をつき
あたしを見据える葵の瞳には
うっすらと涙が浮かんでいるように見えた。



「この指輪───‥」



そう言って二人の目の前に
掲げられる
あたしの左手薬指。



「気持ちを再確認するための
モノでしかないはずだったんだ」



キラッと輝く小さな石は
ダイヤモンドなのだろうか──‥



「海に求婚しても断られないだろ
ってゆう…俺の勝手な自信?」



そう言いながら掲げた
葵の左手薬指にも
あたしのとおんなじ───。



『ペアリング…』



そう、ただのペアリングだ
と言った葵は苦笑した。



「だけど恭のことを勘違いして
不安になった俺は
自分ちの玄関前にしゃがみこんで
立ち上がれなかった。」



なんとなく───‥
その様子が脳裏に浮かぶ。