催涙雨





まあその話は置いといて‥
とニコニコと笑う葵に
あたしはこんがらがる。


そんなあたしを見かねてか
葵は話を戻そうと
冷静な顔つきに戻った。



「で、葵くんはショックを
受けたのです。」



さっきまでと口調が全然違うけど
まあ、いいか。

待ち望んだ葵がいま
ここにいるだけで
あたしには十分だから。


いまはその理由(ワケ)を
葵から聞くんだ。



「とてもプレゼント渡しに行く‥
なんて自信なくなって。
…ある人に、相談しにいった。」



ある人…?



「経緯をすべて話して…
そのある人は、奥さんに連絡して
…俺に、許しをくれたんだ。」



どんな許しを…?
と思うが否や
葵にきつく抱き締められる。


なんだろう…?

今日の葵は、甘くて儚い。



「海…結婚してください…。」



結婚───‥。


さっき見せた
おちゃらけた様子など
どこかに吹き飛ばして‥
儚い葵だけが、
いまここにいる。



結婚だなんて、漠然すぎて。


何も考えられなかったけど…
頭よりカラダが動くもので



『はい。喜んで…。』



慈愛に満ちた声で
私は返事をしていた。