マフラーから吐き出される排気音が、神崎鷹臣が直に現れる事を知らせてくれている。



不安、怒り、戸惑い、そして緊張…脳内で、心中で、感じているままの感情が、形を言葉に代えて右往左往していた。



それ等を誤魔化すように、タバコの煙を肺奥まで吸い込み、高鳴る動悸とシンクロさせる。



渦巻く様々な感情を感じながら、大きく構えていられない自分が酷く小さく見えていた。



柄にも無く緊張している…お袋譲りの強心臓が、神崎鷹臣と対峙する事に動揺を露わにしている…その事がどうにも許せなく感じた。



これから銃で撃ち合う訳でも無ければ、死を背中合わせにロシアンをする訳でも無い…未だ見ぬ神崎鷹臣という人間を、計り知れない恐怖が全ての原因だった。