「このメモリースティックを渡すつもりは最初から無い。ノリが見つかったのなら俺は帰るよ。」



深く空気を肺奥に吸い込み、十分な間を置いてから黒沢一樹に鋭い視線を送った。



「ノリにどんな言葉をかけてやるのかは知らないが、彼奴はあんたの事を心酔してる。彼奴をがっかりさせないように、あんたはこれから一生片意地を張り通せよ。」



それだけ言うと、俺はテーブル脇に落ちているもう一丁のトカレフを拾い上げ、ドアへと向かった。



「このトカレフであんたを撃ってたら、三龍は大喜びしたろうな…。」



ドアに向かってそう呟き、俺は一度も振り返る事無く[神堂組]の事務所を後にした。