なんでも屋 神…最終幕

火を付けたばかりのタバコを、テーブルの中心に置かれた灰皿に投げ捨てようとした時、黒沢一樹が動いた。



元々余り筋肉質では無いその動きの俊敏さは、猫科の猛獣を思わせる。



狙われていたテーブル上のトカレフを右手で払い、腹の前に指していたもう一丁のトカレフを眉間に突き立てた。



「俺は予備のマガジンが無いとも、トカレフが一丁しか無いとも言ってない。切り札は先に見せるな…確かガキの頃あんたから教えて貰った言葉だったよな。」



トカレフを取られていたら、場の流れが変わっていただろう。



少なくとも、俺が主導権を握る流れではなくなっていた。



「この中に写っていたのは、元[神堂総業]代表の神堂龍造、現[神堂総業]代表の黒沢一樹、市長選に立候補中の、元[荒木建設]の取締役荒木紳助。そして…俺の父親だな?」