なんでも屋 神…最終幕

「イトさんが家に来て暫く経った頃だったかね。なんとなく気付いたよ。自分の父親の名前を聞いても驚かないのかい?」



静まる空気が、真夏にも関わらず室内の温度を下げていく。



窓の外は、未だ曇り空のままだった。



「神崎鷹臣の名前は、この間神堂から聞いた。会った事もない奴の名前を聞いても、何の感慨も沸かないさ。」



そうかと言って、所在なさげに首を巡らし、お袋は何かを考えているように黙り込んだ。



「そんな事より、お袋はイトさんが亡くなった事を伝えたんだろ?俺の名ばかりの父親は、実の母親が亡くなっても顔すら出さねぇんだな。」



そう捨て台詞を残すと、俺はお袋が何か言いたそうなのを無視し、リビングを出て自分の部屋に戻った。