なんでも屋 神…最終幕

厳格な父親との衝突を繰り返し、遂に家出してしまった息子です。

息子が出て行った次の年、イトの夫、鷹臣の父親は急死しました。

それからは一人で細々と暮らしておりましたが、風の噂に息子がこの街に居ると聞き、一目会いたいとやってきたのです。

ですが、私が見たのは、坊っちゃまをお産みになった奥様が、一人で坊っちゃまを育てている所でした。

居てもたっても居れなくなったイトは、奥様に自分の名字を偽り、使用人として働かせて下さいとお願いしたのです。そして今に至ります。


奥様にも、今まで騙してきて申し訳ありませんでしたとお伝え下さい。

坊っちゃまやお亡くなりになったお嬢様。奥様と過ごした時間は、イトにとって何物にも変えられない楽しくて幸せな時間で御座いました。

坊っちゃまはもう覚えていないかもしれませんが、幼き頃にイトが夕ご飯の支度をしている時、小さな声でおばあちゃんと言われた事、イトはどれ程嬉しかった事か分かりません。


これからは坊っちゃまと奥様の幸せを、空の上から見守っています。


            神崎イト