二人が動いたのは、間の距離が一メートルに縮まった時だった。



腰に差したトカレフをノリの眉間に突き立てると、俺の眉間にも冷たい感触が伝わってくる。



どちらも人差し指は動かさず、人の気配を無くした工場内に一瞬の静寂が訪れた。



大口を開けたグロッグが、狙いを定める必要も無く、眉間の位置で背筋を凍らす冷気を放っている。



逼迫した状況ながら、俺は随分と昔に感じる記憶を思い出していた。



「確か、お前と初めて会った時もこんな状況だったな。」