なんでも屋 神…最終幕

マジェスティで走っていると、商用車やトラックのエンジン音が遠ざかっていく代わりに、蝉の声が近付いてきた。



徐々にアクセルを戻していくと、住宅街の中に在る一軒家の前でマジェスティを停める。



その一軒家が建つ空間だけ、このクソ暑い夏から取り残されているようだった。



実際にその通りなのだが、喪に服しているとしか言い表しようがない佇まいは、全体的に物悲しく見える。



ゴツゴツとした二本の石柱の間を歩き、数段程の階段を上っていくと、玄関の脇に林海の表札が視界に入った。



インターホンを押して数十秒程その場で待っていると、中から床を叩きつけるようなスリッパの音が聞こえてくる。