どうせ麻雀かパチンコに興じて要るであろうお袋は、当然の如くリビングになんて居るはずがない。



キッチンのテーブルに出されていたのは、丼物とお吸い物、イトさん手作りの浅漬けキュウリ。



丼を開くと、鮮やかな三つ葉の香りが食欲をそそるカツ丼だった。



未だ固まる前の卵が、堪らなく食欲をそそった。



イトさんがお茶の準備してくれてる間に、匂いと見た目にどうしても我慢出来ず、カツ丼を一口頬張る。



半分はタレに浸かり、もう半分はサクッとした歯触りの衣。噛めばその衣から滲み出るタレ。



肉汁と衣と半生の溶き卵。当然、箸の休まるはずがなく、勢い良くかき込むという言葉しか当てはまらない。