なんでも屋 神…最終幕

だが今は、来るか来ないかも分からない犯人を待っている身。



仕事をしているのだという気分には、到底なれなかった。



マガジンを内部に戻し、チェンバーが弾をくわえ込む冷え冷えとした音を耳で確かめ、照準も定めないままグリップを強く握る。



…そこで自分が如何に愚かな人間で、浅はかな先読みしか出来ていなかった事実にやっと気が付いた。



このままトリガーを引いたとしたら、静まりかえった辺りに銃声が木霊してしまう。



その音を不審に思う老人達が起きてくるのは、目に見えている。



そして犯人が本物だと信じ込んだら良いが、偽物だと言われても発砲出来なかったら、脅しの道具にすらならない。



持ち歩くだけで銃刀法違反に問われる立派な鈍器の誕生に、暗闇の中で一人苦笑いを漏らした。