「有り難う。兄に、神君から依頼を断られたら、お前の人望が無いからだと脅かされていたんだよ。」



どうやら今までは少し緊張していたらしく、宇佐見さんは僅かばかり表情を柔らかくして見せた。



「でも、どうして警察に言わないんです?それだけが引っかかるんですが。」



これから市の長になろうとしている人物が、まさか警察を信用出来ないからだとは言わないだろう。



「警察に頼れば、向かいの保育園に子供を預けている親御さん達が、心配して子供を預けなくなる。そうなって一番困るのは、母親の方が多いでしょう。直接的な害は無いから、警察には頼らない方が良いというのが、この老人施設に住む人達の総意だからですよ。」



成る程…その老人達の総意が、この老人施設と保育園の結び付きの強さを表している気がした。