あのこになりたい

「荒井にCD返そうと思って」


幸輔は鞄からガサゴソCDを出した。



「そうなんだ…。綾なんか忙しそうだったから。明日綾と会うから…渡しといてあげるよ」


私は無駄な抵抗だとしても、汚くても綾と幸輔を会わせたくなかった。



「そっか…じゃあ。頼む」

幸輔は私にCDを渡した。



「幸輔…番号とアドレス交換しようよ」


私は、なるべく笑顔で言った。



「えっ。いいよ」


幸輔は驚いていたけど、断られなくてよかった…


「また連絡するね」



私は幸輔を見送った。



あれほど知りたかった幸輔のアドレスを目の前にすると、なんてメールすればいいのかわからなかった。



今さらシュンのことただの知り合いです…とかわざわざ言うのも変だし。



考えるだけで結局メール送れなかった。



「綾…」


綾が外を歩いているのが見えた。