だが彼女に言われて気がついた。
少々、息が切れている。
――未練?
胸中が音を立てて波立っている。
ズバリ言い当ててほくそ笑んでいる麻里絵が脳裏に浮かんだ。
お見通しです的な語尾に徐々に苛立ちが募る。
が、それ以上に簡単に揺さぶられている自分に腹が立った。
――未練なんてあるわけない
日向子は一人かぶりを振って、まだ騒ぎ立てている彼女に答えた。
「だから、その話はもう終わり。
で、麻里絵こそ何か用なの?」
「あ、そうそう!
今日さぁ、パァ~っと女二人で飲みにでも行こうと思って!
どうせ暇になったんでしょ?」
予想外な誘いに日向子は、ヘッ?と洩らした。
彼女から誘われるとは珍しい。
合コンともなれば皆勤賞ものだが女同士では滅多に出掛けることはない。
失恋した友を気遣おうとでも言うのだろうか。
いや、未練がましく落ち込む私を肴に飲みたいのかもしれない。
まぁ一方的に私が振ったとはいえ失恋には違いはないが…。
どうせ事情聴取されるのだろうが気遣いは気遣いで快く受け取っておこう。
とりあえず、麻里絵の誘いに乗ることにした。
考えてみれば彼女の言う通りだ。
どうせ一人でいても暇を持て余すだけだし、自ら振って別れたとはいえ何となく気は晴れない。

