突然、シンと静まり返った夕闇を切り裂くように携帯の着信音が鳴り響いた。
ハッと我に返り、携帯を開く。
画面には、「麻里絵」との表示。
中学からの友達だ。
誰とも話したくない心境だったがシカトしても後が面倒になる。
麻里絵は無視されるのを最も嫌うからだ。
躊躇いながら8回目くらいのコールで出ると、
「出るの遅っ!
……あ、ひょっとして、今まだ取り込み中だった?」
受話ボタンを押した途端、甲高い声が早口に捲し立てる。
別段いつもの事だが、今に限っては少々耳障りだ。
「ううん、ついさっき別れたよ」
「え!?…マジで?」
感嘆に満ちた声が返ってきた。
「ほんとに別れたの?」
「うん……別れたよ」
「本当にそれでよかったの~?
彼、いい人だったじゃない…」
「私がいいって言ってるんだから
それでいいのっ」
「じゃあ、そんなにムキになる事
ないじゃない。
だから、散々言ったのにぃ…」
不躾に内心をえぐってくる。
本心を探り当ててどうするつもりなのだろうか。
お構い無しにチクリチクリと突っ込んでくる。
腐れ縁なればこそ成せる業だ。

