貴文の姿が見えなくなっても暫くその場から動こうとはしなかった。



一人ベンチに座り、物思いに老けっていた。


貴文との思い出にではない。


あの人の予言を思い返していた。




《運命の男は2012年の4月2日に現れる》




あの人は確かに私に告げたのだ。
無視することなど到底できない。


あの人とは【マダム ララ】。


私が全幅の信頼を寄せる占い師だ。






ララとの出会いは四年前に遡る。


高校卒業を控えたあの日。
私がゴミ同然に捨てられた日だ。


当時の彼と過ごした三年と幸せと希望に満ち溢れた未来は無惨にも一瞬にして閉ざされた。


それもたった一人の女によって。




あまりにも惨めだった。


信じていた男が見ず知らずの女にシッポを振って付いていく。


だが恨むべくはその男でも女でもない。

自分の愚かさだ。


そんな馬鹿な男を未来永劫信じようとしていたのだから…。



自暴自棄になった私の前にララは突如として現れ、そして包んでくれた。



男を見極めるのではなく
全ては運命に導かれるのだ、と。




私は決めた。




彼女を信じる、と。




運命に逆らおうなど愚劣なことなのだ、と。




全てが運命の元に決まっているのならば、それを信じたほうが賢明ではないか。




決して間違ってなどいない。




決して…。