どのくらい沈黙が続いただろうか
あれだけ人の往来があった園内は気づけばまばらになっていた。
日向子は相変わらず黙ったまま、一向に動こうとはしない。
貴文が深いため息を吐いた。
どうやら冗談ではないと観念してくれたようだ。
「俺が…
これからどう頑張ったとしても
お前の考えが変わることはない
のか?」
震える声ですがる貴文に日向子は微塵も揺らぐことなく頷いた。
「ゴメンね、貴文」
その瞳には決意のみが宿っている。
「…そうか……
ただ…最後に教えてくれ。
俺とは…遊び…だったのか?」
「遊び?遊びなんかじゃないわ。
本当に今も愛してるのよ。」
「じゃあ、何で?」
納得できない貴文が食い下がる。
「だから、運命なんだってば!
貴文とはもう付き合えないの」
「…だから、…何で…」
頑なな日向子に抗う気力も失せ、貴文はガックリと肩を落とした。
が、俯いてはいるもののその拳は硬く握りしめられている。
内に秘めた怒りがいつ爆発してもおかしくはない。
一触即発――まさにそんな状況だ。
が、こっちだって無傷で済まそうなどとは最初から考えてもいない。
平手の一発くらいは覚悟の上だ。
むしろ、その程度で済めばラッキーだと思いたい。
日向子は奥歯を噛みしめて腹をくくった。
が、意外にも彼は何もせずに立ち上がると、出口ゲートに向かって歩き出した。

