「大和部長、本日入社した4名を連れて来ました。」



そう加藤が報告した先には、明らかにその椅子に座るには相応しくない年齢の男性が座っていた。


だが、たしかに席の前には「ネット販売事業部長」とプレートが置かれている。


親子ほどの年齢差のある男と談笑しているその部長が加藤の呼び掛けに気付いてこちらを一瞥した。


この人が?と日向子は眉間に皺を寄せた。


歳は30代になりたてといったところだろうか。


茶色に染まった長い髪をワックスでなびかせている様がどうにも部長という肩書きと釣り合わない。


が、よく見れば落ち着きはらった仕草一つにその若さで上り詰めたオーラが滲み出ている。


ダークグレーのスーツの着こなしも見事だし、胸元の赤いスカーフがワンポイントとして際立っていた。


スーツはオーダーメイドなのだろう。
手首に光るカフスボタンが実にお洒落な感じを演出している。


新入社員のそれと比べるのは失礼な程、大人の男としての魅力を十二分に醸し出していた。


そして、日向子の目を引いたのはその若さやオーラだけではなかった。



彼もまた赤いネクタイをしていたのだ。