――キッカケは彼からなのだろうか?
――それとも私から?
そんなことを考えているうちに入社式は滞りなく終了し休憩に入った。
休憩の後、研修会の説明に入るとのアナウンスが流れた。
会場内はトイレへと急ぐ者、資料を再読する者とに分かれて途端に騒々しくなっている。
彼を一瞥すると動く気配はない。
とりあえず、日向子もトイレにと思って席を立ったのだが、あろうことか清和が行く手を塞いだ。
「お前、この会社だったんだな。
何でこの会社を選んだんだ?」
「別に…たまたまよ」
「俺はさぁ、親父がこの会社で総務部長してるんだよ。
だからコネで入ったんだけどな。」
まぁ、精々そんなところだろう。
お前ごとき輩が実力で入れるほど広き門ではなかったはずだ。
「で?
まさか、俺とヨリ戻したい?」
耳を疑った。愚問にも程がある。
――こいつ、正気か?
――脳ミソ溶けてんじゃないか?
瞬時に頭に血が上るのが自分でもわかった。
卑しくニヤけたこの大馬鹿野郎は親父の役職を振りかざせば、女はなびくとでも思ってるのだろうか?
本当におめでたい奴だ。

